【朝ドラ「あんぱん」第127話レビュー】愛され悪役・ばいきんまんの誕生! 嵩の思いが八木へ与えた勇気

#朝ドラ「あんぱん」レビュー 公開日:2025.09.24

2025年9月23日(火)に放送されたドラマ「あんぱん」第127話。長年愛され続けている悪役・ばいきんまん誕生と八木の戦争体験が語られ、視聴者の間で「八木さんがずっと誰にも辛い想いを言えずに抱えて生きてきたのが伝わりました」「あんなに憎めなくて愛らしい悪役はいない」と話題になりました。

 

憎めない悪役・ばいきんまんの誕生

ミュージカルの制作を経て、嵩は『アンパンマン』にも新たな悪役が必要であると感じるようになっていました。求めるのは、既存の悪役よりもチャーミングで愛すべきキャラクター。こうして、今日まで長い間愛されている悪役・ばいきんまんが誕生したのです。

恒例となった『アンパンマン』の読み聞かせ終了後、柳井夫妻と語り合う蘭子と八木。敵同士であるアンパンマンとばいきんまんが決して互いを殺さない『アンパンマン』の展開について、蘭子は「ほかのヒーロー物とは違う」と感じていることを吐露します。

「僕は、それが健康な社会だと思うから」と思いを語り始めた嵩。「人間の身体にもいい菌とバイ菌があってバランスが取れてる。バイ菌が絶滅すると人間も絶滅してしまう。絶えずきっ抗して戦っているのが健康な世の中だと思うんだ」と、社会を人間の体に例え『アンパンマン』へ込める平和な社会への展望を口にします。

嵩の思いを聞いたのぶは、全員が同じものをみて似た発想をする世の中は危険だと一言。「そんなのうそっぱちやって、蘭子にも言われたきね」と微笑みます。のぶの言葉に何かを考え始める八木。その傍らで蘭子は「そんな時代に戻らないように、描き続けてください」と嵩を鼓舞するのでした。

 

ついに明かされた八木の「戦争体験」とは

柳井夫妻の帰宅後、意を決した表情で口を開いた八木。「柳井ものぶさんも、そして君も、30年前の戦争を自分のこととして考えている」と、凄惨な戦争から目を背けようとしてきた自分を省みます。そうして八木は「そんな君に、俺もちゃんと向き合ってみたい」と、一度断った蘭子の「戦争体験者への取材」を受けることを宣言しました。

数多くの敵兵を殺めた兵隊に送られる金鵄勲章。八木がそれを受賞したのは、1回目の従軍・中国との戦争が始まって2回目の夏のことでした。敵に包囲された絶望的な状況の中、機銃を手に生き延びた八木。自分へ飛び掛かってきた敵に銃剣を突き刺した八木は、目の前で敵の命の灯火が少しずつ弱まりやがて消えていくのをはっきり感じたといいます。

息絶えた敵の遺体から零れ落ちた財布。そこに挟まれていたものを思い出し、「俺が刺し殺した敵兵の……妻と子の写真が」と語った八木は、耐え切れず号泣し言葉を詰まらせてしまいました。黙って八木の隣へ座り、全てを受け止めるように八木を抱き締めた蘭子。暗い室内へ、2人の嗚咽が静かに響き渡るのでした。

視聴者からは「敵も味方もなく共に生きる。そんなに世の中になってほしいと願う嵩の想いが伝わった」「八木さんの隣にいてくれたのが、話を聞いてくれたのが蘭子ちゃんで良かった」といった声が続出。戦後30年、ようやく戦争の凄惨な体験と向き合えた八木が、今後少しでも平穏な日々を過ごせることを祈ります。