【朝ドラ「あんぱん」第122話レビュー】「それが戦争なんだよ」 時を経て語られる岩男の死と息子の想い

#朝ドラ「あんぱん」レビュー 公開日:2025.09.16

2025年9月16日(火)に放送されたドラマ「あんぱん」第122話。のぶたちの幼馴染みであり、戦争で亡くなった岩男の息子・和明へ岩男の死に際を語る嵩と八木が描かれ、「心にドスンと響く回でした」「決して忘れてはいけないこと。見終わってからもしばらく涙でした」と視聴者の間で話題になりました。

 

多忙な嵩へ話を聞きに来た「来訪者」とは

たくや主催の大人も子供も楽しめるミュージカル『怪傑アンパンマン』の制作プロジェクトが始まりました。有名演出家とプロの役者が参加するこの舞台で原作・脚本と舞台美術を担当する嵩は、編集長としての仕事も相まりますます多忙を極めていきます。

その頃、蘭子の書いた戦争記事を読み、賞賛の言葉を投げかけた八木。蘭子は、従軍経験者である八木と粕谷にも当時の話を聞かせて欲しいと頼みます。粕谷が承諾した一方、「勘弁してくれ」と苦い顔でオフィスを出ていく八木。しかし八木は、廊下ですれ違った人の顔を見て思わず足を止めました。嵩を訪ねてきたという来訪者を迎え入れた蘭子も、彼の顔を見て静かに目を見開くことに。来訪者の顔は、かつて八木の戦友であり、蘭子たちの幼馴染みでもあった「岩男」によく似ていたのです。

 

亡き父が戦場でしたこと、父の死の理由を知った和明は……

嵩を訪ねてきた岩男似の男性は、彼の息子・田川和明。結婚し息子を授かった和明は、父との思い出が無く、息子への接し方を決めあぐねていたのです。だからこそ、父・岩男のことを知りたいと感じていた和明。八木は静かに戦争当時のことを語り始めました。

かつて岩男から息子のように可愛がられたにも関わらず、最後に岩男を撃ち殺した中国人の少年・リンの話を和明へ伝えた八木。「なぜ懐いていた子供が父の命を?」という和明の問いに、八木は決心したような表情で「少年はゲリラの子だった。ゲリラ討伐で日本兵に両親を殺されたんだ」と答えます。

岩男がリンの両親を殺し、リンが両親の仇を討つべく岩男を殺害した事実。岩男を殺した直後に泣き崩れたリンはその後、八木の手によって処刑を免れ逃げおおせることに。それが岩男の願いであったことを聞いた和明は、納得いかない表情で「なぜ父は殺されなければならなかったのか」と零します。そんな和明へ答えたのは、「それが戦争なんだよ」という嵩の重く静かな一言。やるせない表情を見せた和明は、そのまま黙り込んでしまうのでした。

帰っていく和明を追いかけたのぶは、「何も助けになれないかもしれないけど……」といいながら『あんぱんまん』の絵本を差し出します。「これが、うちの人の気持ちです。よかったら、お子さんと読んでみてください」と言うのぶへ、丁寧に「ありがとうございます」とお辞儀をした和明。のぶと嵩の想いは、和明の悲しみを癒やすことができるのでしょうか。

視聴者からは「岩男が死んでいったシーンを思い出し、今朝は涙が出ました」「嵩が『逆転しない正義』を求める原点を再認識出来た回だと思いました」といった声が続出しました。戦争で傷ついた人々の癒やしになるようにと描かれた『あんぱんまん』。嵩の想いが、和明のような人々の心を癒やすことを切に願います。