【朝ドラ「あんぱん」第117話レビュー】「それで救われる人がきっと、こじゃんとおる」 戦後20年、人々へ色濃く残る痛みに届け『アンパンマン』!

#朝ドラ「あんぱん」レビュー 公開日:2025.09.09

2025年9月9日(火)に放送されたドラマ「あんぱん」第117話。嵩の思いを詰め込んだ作品『アンパンマン』へのぶが抱く深い愛情が描かれ、「がんばれ崇、飛べアンパンマン!」「嵩くんのなかなか言い出せない思いをのぶちゃんが代わりに伝えてくれましたね」と視聴者の間で話題になりました。

 

手嶌治虫との合作『千夜一夜物語』をきっかけに世に出たあの「超有名作品」

昭和44年6月、嵩が美術監督を務めた映画『千夜一夜物語』が公開されました。映画館は大行列の満員御礼。治虫は、自分の仕事場を訪れた嵩へ「嵩の脚本・監督でイチから映画を制作してみないか」と提案します。制作費は全て自分が出すと言いきる治虫に、当然のように戸惑う嵩。しかし、憧れの手嶌治虫が嵩を心から認めたが故の「誰よりも僕が、やないたかし監督の作品を見たいんです」という言葉を受け、ついに首を縦に振るのでした。

以前『アンパンマン』の構想を断った編集者・本間が再び「次回作を描いてください」と嵩へ依頼をしにやって来ました。せっかくだから『アンパンマン』を見せないかと提案するのぶ。「あれはもう、構想の段階で一度断られてるから」と躊躇する嵩をよそに、のぶは本間へ『アンパンマン』の原稿を差し出します。のぶの情熱に負け、シナリオを全て読んだ本間。検討の末、彼女は「そこまでおっしゃるなら、載せてみましょう」と『アンパンマン』の雑誌掲載を決定するのでした。

 

『アンパンマン』へ詰め込まれた嵩の思いとのぶの愛

当時の「ヒーロー」像は、マスクやマントを纏い悪者と派手に戦う「かっこいい」存在が主流。それと正反対の「太っちょのおじさん」ヒーロー・アンパンマンの評判は、当初あまりパッとしなかったようです。登美子は、『アンパンマン』を読んで大笑い。第一声に「最悪ね」という感想を述べた登美子は、ボロボロのマントをまとい武器を買うお金も無いほど貧乏な「ハンサムでもない汗っかきのおじさん」ヒーローを酷評します。

あまり良くない評判に落ち込む嵩。しかしのぶは、アンパンマンの「かっこよくないところ」が最も好きだと語ります。勧善懲悪が正しいとされる世の中で、勧善懲悪以外の方法で「正義」を行使するアンパンマン。例え自分が撃たれてもおなかを空かせた子供たちのため飛び続ける彼の生き様は、まさに「逆転しない正義」と言えるものなのかもしれません。

「アンパンマンが、嵩さんの思いを届けてくれる。それで救われる人がきっと、こじゃんとおる。だから諦めんといて。アンパンマンは、もっと飛べる」と断言するのぶ。嵩が作品へこめた思いを受け取り慈しむのぶの言葉は、自信を失いかけていた嵩の背を再び強く押すことになります。

その後、何かを思いついたのぶが八木に頼んで子供たちを集めてもらうシーンで終わった本日の放送。視聴者からは「これが、アンパンマンが動き始めた瞬間なんですね、感動です」「アンパンマン、嵩さんの思いを乗せて飛んでいって!」といった声が続出しました。果たしてのぶは何を思いついたのか、アンパンマンがどのようにして現在の国民的存在へ昇り詰めていったのか、明日の放送にも注目していきたいですね。